イチジクの匂いと祖母の思い出、夏の終わりに!
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イチジクの木
実家に帰る道沿いにイチジクの木があります。季節は今がまさしくイチジクの旬です。
人の丈ほどの高さに濃い緑色の大きな葉と横に張った立派な枝ぶりに小さなイチジクの青い実とエンジ色の実が交互に実っています。
イチジクの木から、なんとも言えない、あのもぎたての独特の甘い香りがしてきました。
まさしくイチジクの木から実をもぎ取った時の白い汁の本当のもぎたての香りです。
以前にブログに書かせて頂いたようにイチジクこそが祖母の香りであり、匂いをかいだとたんに、世界がセピア色のようになり、時が走馬灯のように引き戻されていきます。
子供の頃
黒くて細くて三つ編のおさげ髪の私、まだ若くて笑顔の可愛らしい祖母、学校から帰るとすぐにその姿を求めて近所の家を回ったものです。
おしゃべり好きな祖母は、あちこちの家に行き、話好きのおばあさんと話をしていました。横で話を聞いているわけでもありませんが、安心感に包まれていたように思います。
料理は母のほうが上手だったと思いますが、当時では珍しいプリンやインスタント焼きそばを作って食べさせてくれました。
祖母の教え
優しくもありましたが、厳しくもありました。汚い言葉使いは、もっての他で、口から出た言葉は口には戻らず、汚い言葉は、心と顔を醜くさせると言い続けていました。
また悪いことをすると、必ず自分の身に戻ると言うので、私は比較的、地味で引っ込み思案だったと思います。祖母の存在が当たり前で、祖母に絡み付いていた毎日でしたが、いつの間にか祖母の庇護のもとから巣立ち自由を満喫していました。
老いと死
ある時、スーパーで見かけた祖母は小さく違う人のように遠くに見え、祖母が歳老いたことを知り、急に老いというものを身近に感じました。暑い夏の日に祖母が急死した時も初めて人の死というものを知りました。人の生命が永遠ではないということに気づかされたのです。
それから半年以上は家に帰る道が涙でにじみ家を遠くに感じたことを覚えています。
イチジクの匂い、プリンのカラメルの匂い、インスタント焼きそばの匂い、そして最近では珍しい昔の整髪料の匂い。その匂いが、鼻をくすぐる時、私はタイムスリップしてしまい、あまりの懐かしさで、胸がキュンとなってしまいます。祖母も夏が好きでした。
秋が近くなったこの日、祖母と、もっと話をしてもっと吸収したかったと、昔のイチジクより少し大きめのイチジクを食べながら思いを巡らしました。
夏の暑さも、もう少しで終わりです。
近づく秋を感じながら、少しセンチメンタルになっています。